寂しい秋、誰もとらない柿。
家人「お隣の柿今年は不作ですねえ」
私「今は誰もとらないし、かまわないからなあ」
家人「息子さん夫婦は、召し上がらない」
私「ああ、子供もね」
***
だいぶん前、先代夫婦が達者なころは
食べて下さいと小ぶりの竹製のざるに
入った柿をいただいていた。
空になったざるにお菓子を入れて
お返しに行くとざるも使って
下さいといった。
お菓子だけ受け取ってもらった。
その竹の小さなざるは今でも
使っている。
お隣の奥さんは竹細工の品が
大好きで玄関にはひらったい
網目の大きい四角いざるに
柿を枝と葉をつけて飾っていた。
なかなか、オシャレな秋の景色だった。
その後も、小さな草花を小さな竹の篭に
入れたものをいただいたことがある。
「可愛いでしょう」といった。
素朴で美しい。
いま、代が変わって数本の柿は
ほったらかし。
しかし、毎年柿は色ずいてくる。
少し寂しそうだ。
***
Tさんに会った。
Tさん「いつもの病院の帰りだ」
そういって大きな薬の袋を目の前に
差し出した。
Tさん「コロナが少なくなって
良かったない、昨日久留米は1人だった」
私「少ないと安心するよ」
Tさん「さっき病院でな、先生が秋です
食欲はありますか、と聞いた」
私「何と返事したの」
Tさん「おかず次第だ、と答えたら先生と
看護婦さんが大笑いしたよ」
Tさん「刺身があればもっと良いと言った」
先生は「ハイハイ、それが良いですね」と
笑いながら返事したよ。
***
Tさん「あんたんところ、柿はいらんね」
私「柔らかい柿で1個か2個だったら」
Tさん「1,2個は面倒くさい、10個か
20個引き取ってくれんか」
私「そんなにかあ、ごめんこうむる」
Tさん「誰も柿を食わんようになった
毎年始末に困る」
私「柿の頃は医者が青くなると言ったがね」
Tさん「そうだ、あの先生に持って行こうか
先生青くおなり下さいと言うか」
そんなことを話してTさんと別れた。
***
お隣の柿はそのままで良い。
11月過ぎには寒くなって、熟し柿に
毎日やって来る。
柿もそれを待っている。
寂しいが静かな秋。
私「なあおい、あの柿園の便りはもう
そろそろだろう」
家人「そうですね、あそこの跡取りは
頑張っているかなあ」
では、またあした。
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よろこびます。