暮らしの幕引きは、終わるまで大変。
朝、Kさんの奥さんが来た。
どうやら、家人と話しをしたいようだ。
キャンプ用の折りたたみの椅子を2脚出して
風通しの良い、日陰になるところで
おしゃべりが始まった。
いつもと少し違う。
高い声の笑いがない。
少し、深刻な話だろうか。
***
Kさんの御主人は、緑内障がひどいので
ほとんど目が見えない。
家の中は、壁や柱づたいで移動している。
奥さんはいっときも目が離せない。
散歩も奥さんが手を引いて歩いている。
ここの家には、ご主人の妹さんが
同居しているが
自閉症でほとんど部屋にこもっている。
Kさんは、この2人の面倒を見ている。
Kさん夫婦は、お役所で共稼ぎだった。
ワシと同様で年金暮らしだ。
ふところの温かさはずいぶん違う。
昼前まで話をして、静かに帰った。
***
家人「Kさんは話し相手がないようだ
息子は寄り付かない、里はもう誰もいない」
今どきは、子供は自分たちに負担が
かかるのが一番嫌う。
何しろ、お金の世の中だから、昔だったら
「苦労は買ってまでしろ」と言ったが
もう絶対に通用しない。
家人「息子さんが、嫁さんを説得して
両親に手を差し伸べれば、それで
助かるんですがねえ」
私「それが最善とわかっているがね
お金とお嫁さん次第の世の中だよ」
近所のHさんの所は、息子夫婦と一緒に
住むために家を建て替えた。
住んでは見たが、嫁さんと折り合いが
つかなかった。
息子夫婦は出て行った。
しばらく、もとの一人暮らしだったが
ボケが入って施設に入った。
***
私「なんのための努力だったんだ
むなしいね」
家人「家族のあり方って、むずかしいですよ」
私「それで、どうなった」
家人「民生委員さんと、包括センターの
ケアマネージャーのことを教えました」
私「これから先がうまく行けば良いがね」
暮らしの幕引きは、終わるまで大変である。
では、またあした。
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