草刈りあとの香り、雨降り始めの香り。
おはようございます。
久留米のじじいであります。
晴れた朝、ウィーンと草刈り機の音がした。
家人「お隣は、草刈りが始まりました」
私「ああ、先ほどから草刈り機の音がするね」
家人「もうしばらくすると、草の香りが
してきますよ」
私「青臭い独特の香りだろう」
家人「ええそうです、好きな香りです」
私「ワシも嫌いじゃあない、むしろ好きだ」
***
私「昔、子供のころにな、馬の餌にする
草刈りに付いて行った」
家人「あんたも草刈りをしたの」
私「いいや、あの頃は小さかったから
草刈り鎌は危ないと言われたよ」
朝の草刈りは、まだ朝露が草に残って
服が濡れてしまった。
草を刈り取ったあとには、いろんな
虫がいた。
それを、よく見ていた。
その場所は、いつも青臭い草の匂いがした。
刈りたての草は、まだ生きている。
青臭い。
この時に、草刈りあとの香りを覚えた。
80才の年寄りになっても、はっきり
覚えている。
かぐわしい良い香りと言える。
***
家人「香りって、不思議ですね」
私「なぜだね」
家人「子供時代に覚えた香りは、その景色まで
ハッキリと記憶に残っています」
私「そうだな、その時に記憶したものは
いつまでも忘れないようだ」
家人は、空き地で遊んでいて、急に夕立が来た。
大粒の雨が降り出した。
地面がポツリ、ポツリと濡れて行った。
しばらくすると、土の香りがしてきた。
母さんの声がした。
「早く家に入りなさい」
濡れた土の香りに引き留められた。
この香りは、雨が降り出した時に必ず
思い出します。
私「ワシにも似たようなことがあった」
***
あのころ、魚釣りに夢中になっていた。
急に雨が降り出すが、止めたくない。
少し濡れても、平気だった。
まわりの乾いた地面が、降り始めた雨で
濡れ始めると、決まって土の香りがした。
その香りを惜しんだ。
雨足が強くなる。
慌てて釣り道具をしまって、走って帰った。
濡れネズミの姿で帰り着いた。
祖母は、釣り籠の方を先にのぞきこんだ。
「おや、釣れたね、晩のおかずになる」と
喜んだ。
***
家人もワシも子供の頃は、毎日自然の中で
遊んでいたように気がする。
今の子供たちも、そうだろうか。
家人「どうでしょうかね」
お隣の草の香りと草刈り機の音は
まだ続いていた。
では、また明日。
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嬉しいのであります。