あいつが三途の川につくまで見守りたかった。
おはようございます。
KZZ(久留米のじじい)であります。
蛸に見えませんか?
人は、枯れてゆくんだ。
そして、お終いになるんだ。
人生って、そう言うもんだ。
わかっていますがねえ。
***
80才は、とうの昔の過ぎて今は90才に近い。
「お宅は、まだ若いよ」
その友だちは、そんなに言ってた。
この年代になると、年に数回はこんな話をきく。
こればっかしは、決して楽しい話ではない。
もう、勘弁してくれって思う。
あの人は、少し離れたところで、野菜を
作っていた。
家は農家だった。
もうとっくの昔、息子に後を渡していた。
そう言う立派なものではない。
農家の俺が、田畑を息子に渡しただけ。
そう言った。
まわりは、あいつ悠々自適の年金暮らしだとか
楽隠居だとか言ってた。
それが、病気だって聞いたのがつい最近。
ガンで終末病院に入っていたそうだ。
それで、近ごろ姿を見かけなかった。
ときどき、私の畑にもっさりと現れた。
いや、幽霊じゃあない。
元気だが、動作が静かな人だった。
言葉数も少ない。
無口な人だった。
「苗を持ってきた、あげるよ」
何も用事がなければ、そのまま帰る。
お礼を言う時は、後ろ姿にだった。
そう言う人だった。
***
学童見守りで一緒になった。
結構疲れる仕事で、二人一組。
それで、相棒が動けなくなった。
1名欠員だ。
ワシが候補になった。
お誘いが来た。
彼が紹介した。
すまんな、引き受けてくれ。
他に引き受け手が、いないんだ。
仕方がないOK。
「おつきあいを、よろしくな」
無口の友が、そう言った。
年中ほとんど、立ち番。
春、夏、秋、冬。
学校が休みの時は、こちらも休み。
午後3時から5時までの2時間。
立ちっぱなしで、結構疲れる。
そんな時に、家で使っている折りたたみの
椅子を使ってみた。
もちろん2脚。
これが、大当たり。
とても楽ちん。
これだと疲れない。
子供たちが通ると目線が同じ高さ。
話しやすい。
仲良くなった。
帰っても家には誰もいない。
見守りが終わるまで、傍にいる。
家の近くまで、一緒に帰る。
共稼ぎだと言う。
「さよなら、また明日」
ところが、どうだいこんな始末さ。
あいつがサヨナラだって。
ワシは、あいつが、三途の川につくのを
見守ってやりたかったよ。
では、また明日。
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